タクシージャパン 掲載コラム

「テイクオフ静岡」 への挑戦

静岡TaaSの事業イメージ

 先月のコラム第128回で、この間の静岡TaaSの運営スタイルについて反省をし、多岐に渡る事業の相互関係とその立ち上げ手順を整理した。そして、タクシー事業者にオブザーバーとして各委員会に関わってもらい、共にシステムを作りこんでいただくようにお願いすることにした。


 掲載した図「静岡TaaSの事業イメージ」は、各事業の関連図である。事業内容は大きく「需要の喚起」と「供給の適切なマッチング」に分かれ、赤枠で囲まれた5つの事業はシステム的に直接連携するものである。推進する優先順位は①新チケット回収・顧客管理システム②共同コールセンターが先行し、2,新独自サービス(サブスクなど)や③サブジョブドライバープラットフォームがそれに続く。
 また、法的な障壁は高いが、小規模事業者にとっては運行管理の共同化は戦略的な課題である。サブジョブドライバーの本業との労働時間の管理も含めてIT技術の駆使による安全、安心の運行管理とコストの効率化との両立を図らねばならない。そのための調査研究と行政への働きかけの委員会も作りたい。
 需要の喚起のためには行政が掌握する移動需要との連携、さらに自治会、老人会、経済団体との連携も重要である。
 地域全体最適マッチングの効率化のためには、乗務員のサービスレベルの均質化は必須であり、そのための教育の場が必要とされる。しかし、後半3テーマは一朝一夕にはいかず、①から③までのテーマの実現を図る中で準備されて行くと思われる。とりあえず静岡TaaSのコーディネーターによる①〜③までの構想の叩き台が10月中にはタクシー事業者に提案され、オブザーバー参加いただいたタクシー事業者に揉んでもらって詰めて行くというステップをとり、来年4月を目標とする共同コールセンターの立ち上げに集中して行きたいと思う。

「テイクオフ静岡」への挑戦

話題は変わるが、たまたま先日、静岡新聞の記事で静岡経済同友会が主催する「テイクオフ静岡」というイベントが開かれることを知った。9月16日にウェビナーでその説明会が開かれ、参加した。
 この「テイクオフ静岡」は、既成経済団体が主催するにしてはなかなかチャレンジングな試みで、「突き抜けた静岡を創生する!」をスローガンに、「地域社会のあり方が大きく変容する中、ニューノーマルの静岡創生を目指す『静岡経済同友会』は、国内最大級の地方創生イノベータープラットフォーム『INSPIRE』との連携により、地域活性化の事業成長支援を行う静岡創生アクセラレータ『テイクオフ静岡』の第2期を開催します」とあり、「静岡県中部をフィールドとして地域活性化を目指す多種多様な企業・団体を大募集!突き抜けた静岡を創生する事業アイデアを幅広く募り、その実現に向けて静岡経済同友会を中心とするビジネスメンターが、3ヶ月にわたって一緒にブラッシュアップします」(テイクオフ静岡のホームページより)としている。まさに静岡TaaSは静岡MaaSと共に「突き抜けた静岡を創生する」事業と自負する私としては、このイベントの趣旨に非常に刺激を受け、是非参加したいと思った。また静岡TaaSが地域コミュニティのひとつである有力経済団体との連携を図れる極めて有用な機会になるのではないか、と思う。(選ばれれば、の話だが・・・)

「縄文文化ビジネス」への共感

総合プロデューサーを務める、非営利法人地方創生イノベータープラットフォーム「INSPIRE」代表理事の谷中修吾氏が「最強の縄文型ビジネス」(日本経済新聞出版社)という本を2年前に出している。縄文型ビジネスという言葉はあまり聞きなれない言葉だが、弥生時代前に1万年続いた縄文時代への再評価(小林達雄著「縄文文化が日本人の未来を拓く」)が進んでおり、興味本位で「最強の縄文型ビジネス」を早速アマゾンで購入し、読んでみた。

その著書の中で、「テイクオフ静岡」総合プロデューサーの谷中氏は、企業が利益の最大化を求めることに最適化した弥生型ビジネスに対し、縄文型ビジネスを「企業が地球と共存共生することに最適化したビジネス」と定義し、その相互浸透による「ツインドライブ」を提唱している。弥生型ビジネスの計画的、競争的、コンプライアンス、期待オリエンテッドの4つの特徴に対し、縄文型ビジネスを直感的、協調的、フリーダム、感謝オリエンテッドとして対置し、弥生型ビジネスの行き過ぎによる現在のビジネスの歪みを、縄文型ビジネスの視点からバランスをとることを説いている。

この「テイクオフ静岡」もそういった観点からの斬新な取り組みだと思う。「突き抜けた静岡」を創生するためには「そろばん勘定」を踏まえつつもそれを「突き抜けた」熱意と直感にもとづくビジネスモデル構想が突破口になると思う。静岡経済同友会がこうした方を総合プロデューサーとして迎え、突き抜けた静岡創生のためにチャレンジしていることに、静岡経済界と静岡市地域の可能性を強く感じる。 10月17日がプラン提出の締切日だが、静岡TaaSらの内部、事業者との議論を踏まえて是非チャレンジしたい。突き抜けた静岡の創生の一翼を、移動の分野で担うためにも! (2021年9月20日記)


清野 吉光(きよの よしみつ) 略歴
1950年 長野県四賀村生まれ、印刷関係など様々な職業に従事。1976年 清水市の日の丸交通入社。1980年 静岡市内の事務機器センターに入社。1982年 システムオリジンを仲間と創業、専務取締役。1992年代表取締役社長就任。2016年3月 システムオリジン社長退任。クリアフィールド取締役。2021年3月 システムオリジン戦略企画担当取締役に就任。2021年5月 一般社団法人静岡TaaS代表理事に就任。

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