タクシージャパン 掲載コラム

肥後Gの着実と我々の試行

第5回肥後グループオフサイトミーティング

毎年3月中旬になると、既に恒例となっている熊本・肥後交通グループのオフサイトミーティングが開催される。
今年もタクシーアシストで、このオフサイトミーティングのオブザーバー参加者を募集し、3月11日に我々スタッフも含め22名のメンバーがいつもの人吉市の中小企業大学校に集結した。
さらに今年の新たなオフサイトミーティングの試みとして、九州一円のタクシー事業者に、肥後交通グループにおける乗務員による小集団活動をベースとしたタクシー事業運営の見学を呼びかけ、結果として15人の参加があった。
その中には、熊本大学でこうした研修セミナーを効果的に行う手法であるインストラクショナルデザインを研究している教授などの参加もあり、取り組みの深化と広がりを感じた。
肥後交通グループのオフサイトミーティングはもともと、年に1回の乗務員の班制度に基づく自主的な年度計画の作成、決定の内部イベントだったが、それを野々口社長が敢えて外部に公開し、オブザーバーを受け入れることで、参加しているプレイングマネージャーと班長の成長の場として位置付けている。
実際、当初のオフサイトミーティングにおいて課題について話し合う課題別分科会では、幹部管理者がファシリテーター(進行促進者)を勤めていたが、前回からは現役乗務員であるマネージャー(数班を担当する)が見事なファシリテーター役を務めている。
また、今回から賛同会社3社の管理者がミーティングにメンバーとして加わり、積極的に発言、交流をしていた。肥後交通グループの内部のイベントから地域的な広がりをオブザーバーとしてだけではなく、実際にミーティングそのものに参加するところまで進化しているのだ。ある意味こうした全面的な小集団活動の展開は、他の産業や業界では広くおこなわれているが、タクシー業界ではかなり珍しい。さらに肥後交通グループではそれを単に自社グループだけで終らせずに、地域、さらには全国のそうしたことを志向するタクシー事業者に共有しようとし、業界そのもののレベルアップを図ろうとしている。なかなかできない事だと思う。
私が社長の株式会社タクシーアシストとしても、微力ながらこうした野々口社長の志に少しでもお役に立てればと思い、今後もこの肥後交通グループのオフサイトミーティングの紹介、オブザーバー参加の働きかけを継続させていただけたらと思う。

無事TSTiEドライバーに!

ところで、前月の「団塊耕志録」のコラムで、TSTiE乗務員になるための最終関門である「東京都地域限定通訳案内士」の研修と認定試験が終わり、その結果が3月中旬に出ると書いた。結果通知は3月7日に書留で自宅に届いたようだが、不在だったので本郷郵便局預かりとなり、ドキドキしながら同郵便局に取りにいった。結果は、嬉しいことに合格で、しっかり修了書をいただくことができた。そこで早速、東京都庁の産業労働局観光課に登録証の申請に行き、3月20日に晴れて「東京都地域通訳案内士登録証」を手にすることができた。さて問題はこれをどう活用するかである!

私がT S T i E ドライバーなった目的には、もちろんインバウンド向けの観光タクシー乗務がおもしろそうだという個人的な興味もあるが、このTSTiEという仕組みをテコとしたプラットフォームがタクシー需要の増大と乗務員不足に対応する業界活性化の一助になるのではないかとの仮説を、自らの実践で検証してみたいという衝動からであった。
このプラットフォームというのは、ある程度の富裕層を中心としたハイヤータクシーの観光・移動需要を、旅行会社だけでなく、業界自らがダイレクトに取り込み、そしてネットワーク化され、データベース化されたTSTiE乗務員及び外国語による観光案内の能力を持った乗務員を、最適かつ効率的にマッチングする仕組み、さらにそうした乗務員の教育とレベルアップを継続的にサポートする仕組みを業界横断的に作れればということである。
もちろんこうした仕組みは各社、取分け大手タクシー事業者では自社だけでできるだろうし、実際それを実行している会社もあると聞く。
しかし、今回の地域通訳案内士の研修を受けた際に、TSTiEの資格保持者や、資格取得のため研修を受けている乗務員の生の声を聴いてみると、受注活動にしてもTSTiE乗務員への配車にしても、また取分けレベルアップのための教育にしても、不十分ないしは皆無という指摘があった。それでは、どうしたら良いのか?

観光タクシー乗務員専門の育成コースを!

私が都内で定時制乗務員として席を置くタクシー会社でもそうだが、通常は、観光タクシー乗務をするためには1年間の流し営業乗務の経験を必要とする。これは多分、行政上の規則ではないと思うが、観光タクシー乗務員の運転能力やホスピタリティを担保するために経験的に作られている内部ルールだと思うし、妥当性もあることだと思う。
しかし、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた300人のTSTiE乗務員(現在は100人に満たないと思われる)を核としたインバウンド対応という点を考えると、顕在及び潜在需要に対する供給力が圧倒的に不足している。その対処策のひとつとして、現在の通訳案内士の資格者(ないしは同等の能力者)に2種免を取ってもらい、スポットの乗務員として活用することが考えられるが、その人達には1年の流し営業乗務は事実上不可能と思われる。
流し営業の乗務に求められる能力として東京全域の地理に精通する必要がある一方で、コースがあらかじめ確定できてカーナビも活用できる観光乗務員とは、ホスピタリティという面では共通であっても、明らかに違う仕事のスタイルだと思われる。むしろ新人研修自体にそれに特化したコースがあって良いのではないかと思う。
全国通訳案内士の資格を持った人からインバウンド観光タクシーの乗務をしてみたいといういくつかの声を聴いているし、また、過去にタクシー乗務の経験があり、ある程度の英語力がある人がセカンドジョブとしてスポットで需要に応じてインバウンド観光タクシーに乗務する道もあるはずだ。それをタクシー事業者がしっかり運行管理すれば、インバウンド客も、スポット乗務員も、そして乗務員不足と稼働率の低下に悩むタクシー事業者にとっても、ウインウインの関係になるのではないだろうか?それを支える仕組みとフォローアップを含む研修制度を業界全体、それが無理なら有志連合で作り上げていけないものだろうか?TSTiEの資格を頂いた私としては、是非その実現を目指して試行錯誤してみたい!
(2018年3月22日記)


清野 吉光(きよの よしみつ) 略歴
1950年 長野県四賀村生まれ、印刷関係など様々な職業に従事。1976年 清水市の日の丸交通入社。1980年 静岡市内の事務機器センターに入社。1982年 システムオリジンを仲間と創業、専務取締役。1992年代表取締役社長就任。2016年3月 システムオリジン社長退任。クリアフィールド取締役。2021年3月 システムオリジン戦略企画担当取締役に就任。2021年5月 一般社団法人静岡TaaS代表理事に就任。

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