タクシージャパン 掲載コラム

静岡TaaSは何処まで来たか

暮らしの足をみんなで考える全国フォーラム2022

 第11回となる「暮らしの足をみんなで考える全国フォーラム」が11月19日に、久しぶりの東京大学で開催された。ひょんなことから第1回から実行委員として関わっていた私は、今回は登壇者の一人として参加させてもらった。
 他の登壇者は、「mоbi」を手掛けるWILLERの村瀬茂高代表取締役とデマンド交通「チョイソコ」を展開するアイシンの加藤部長で、コーディネーターをタクシーのサブスクサービスの草分けである三ヶ森タクシーの貞包健一社長が務めた。
 私も含めて、交通事業者以外からこうした地域交通におけるオンデマンド・サブスクサービスを手掛ける事業者が、何故この分野に参入し、何を目指しているかを問う場だったと思う。
 そして、やみくもにこうした動きに反対するのではなく、「競争から協調、そして共創へ」という志向が強調されたと思う。
 このフォーラムの共催・後援団体を見ると、国土交通省や厚生労働省、経済産業省を始め、交通関係の事業者団体、労働組合、福祉関係の団体が網羅されており、また国土交通省の藤井直樹事務次官がビデオメッセージを寄せてくれたり、鶴田浩久・大臣官房公共交通・物流政策審議官がショートスピーチをしてくれたりと、その影響の大きさを感じる。なかなか政府中枢の運輸行政当局者との接点が少ない地方のプラットフォーマーである私としては、貴重な機会をいただけたと思う。

静岡TaaSの振り返り

今回のパネルディスカッションへの参加を機に、改めて私が代表理事を務める「静岡TaaS」が何処まで来ているのかを振り返ってみた。昨年の3月に地域TaaS(Taxi as a Service)としての「静岡TaaS」を一般社団法人として設立することを決意し、4月に設立、5月に第1回の地元タクシー事業者向けの説明会を開き、共同配車化とサブスクサービス「タク放題」を試行錯誤しつつ準備した。
 共同配車化については、今年2月に最初となる2社での実現を試みたが頓挫し、結局実現したのは9月である。「タク放題」については7月1日に会員28人で実際のサービスを開始し、5カ月目となる11月に入っても、12月までの実証実験期間中における目標会員数400人に対して一桁少ない45人の会員に止まっている。
 一方で、総利用回数は3000回を超え、超近距離という潜在需要の掘り起こしも行われている。現時点で共同配車とサブスクサービスをスタート出来ているという意味では前進している(魔の川は超えた!)ものの、ビジネスとしての継続性という点では目途が付いていない(死の川で苦戦中!)状況だ。
 そして、この12月までの実証実験期間では答えそのものが出せないと判断し、来年6月までのサービスの延長を決めた。共同配車化についても、共同点呼という大きな課題を抱えつつも、少しずつ進んでいる。何よりも今回の「くらしの足をみんなで考える全国フォーラム」において国土交通省の方から、我々の「静岡TaaS」の挑戦を注目しており、こうした取り組みを促すような制度改正等が出来ないか検討したいとの意向をお聞きし、大いに励まされている。
 「タク放題」については、まだまだ会員獲得のために試してみなければいけないことが沢山ある。価格やサービス内容の多様化、エリアの設定、タクシーの借上方式、配車方法など来年からの実証実験の中で検証すべきことが多い。また、乗合オンデマンド運行も大きな挑戦課題である。
 一方で、会員の申込方式がネットからでも可能になり、またホームページも充実してきており、飛躍を予感させる要素も蓄積しつつある。課題、難題は満載だが、しかし、いずれも前進したが故に現れた課題、難題である。取り敢えず、前に進もう!

夜間の配車業務の無人化

共同配車化を進める上では、夜間の帰庫点呼がコスト削減の上で大きな改題であり、そのためには共同点呼の解禁が是非とも必要だということを再三要望してきた。同時に、何よりも夜間の電話受け、配車スタッフの確保が非常に難しくなっている。
 夜間については会社の規模にもよるが一人でオペレーションを担うことが多く、その一方で夜間は残念ながら酔客が多く、ベテランの配車スタッフでないと対応、処理ができない場合が多い。しかし、そうしたベテランは高齢化しており、後継者の確保も難しい。従って、コスト面のみならず、人材面で無人で対応できる仕組みを確立せざるを得ない。IVRなどコンピュータによる音声対応、アプリ配車、あるいは店舗設置型のタブレット(システムオリジンの「こゆび」)など、IT機器による夜間の配車オペレーションを早急に確立する必要がある。
 「静岡TaaS」の共同配車業務においても夜間人材の退職があり、夜間配車業務の無人化(夜間点呼のスタッフは残す)の実現が問われている。しかし問題は、この無人化は顧客と乗務員への周知が必要であり、段階を踏まなくてはならない。従って、その体制を実現するまでは現有スタッフで24時間の対応体制を作らなくてはいけない。
 と、言うことで、私も含めて「静岡TaaS」の事務スタッフも配車業務のシフトに組み込まれ、四苦八苦のオペレーションにチャレンジしている。実際に共同配車の配車業務に携わってみると、単純に配車システムのオペレーションを習得するだけでなく、それぞれの会社独特のルールや乗務員の特徴、顧客の状況が分からないと上手く配車できないことに直面する。また、IT導入による自動配車推進と矛盾するようだが、無線による乗務員とのやり取りもコミュニケーションという点では価値があり、悩ましい。時代の流れとしては明らかにIT化による自動配車化なのだが、それを受け入れられない顧客と乗務員との軋轢が発生する。実際、IVRを採用した静岡市内のあるタクシー会社では、採用当初に顧客離れと乗務員の退職に悩まされたらしい。しかし、結局は経営者がどこまで腹を括って新しい仕組みを実現しようとし、避けて通れないハレーションを粘り強く解決することが出来るか否かである。
 いずれにせよ、配車の世界は奥深い。利用者との最初との接点であり、そのタクシー会社の印象を左右する。一方で乗務員との関係も配車業務のスムーズさに大きく影響する。これが果たしてITで置き換えられるのか、心配にもなるが、利用者も乗務員も時代の変化の中で変わりつつあり、むしろIVRやアプリ配車の方が便利で生身の人間の受け答えよりもよほど良いと考える人もいる。
今はその過渡期で配車センターの運営も非常に悩ましい。当面はその悩ましさを抱えながら、試行錯誤を続けるしかないと覚悟している。まずは配車の実務をしっかり身に着けることから始めたい。
(2022年11月22日記)


清野 吉光(きよの よしみつ) 略歴
1950年 長野県四賀村生まれ、印刷関係など様々な職業に従事。1976年 清水市の日の丸交通入社。1980年 静岡市内の事務機器センターに入社。1982年 システムオリジンを仲間と創業、専務取締役。1992年代表取締役社長就任。2016年3月 システムオリジン社長退任。クリアフィールド取締役。2021年3月 システムオリジン戦略企画担当取締役に就任。2021年5月 一般社団法人静岡TaaS代表理事に就任。

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