タクシージャパン 掲載コラム

ChatGPTとタクシー業界

ChatGPTの衝撃

マイクロソフト社から1兆円もの開発資金を得たアメリカのオープンAI社が、昨年11月に画期的な対話型AIシステム「ChatGPT」を発表した。
 それ以来、IT業界の専門誌やYouTubeだけでなく、一般紙やテレビのワイドショーなどでも連日、この画期的な対話型AIシステムの話が盛んに取り上げられている。
 2016年6月に「シンギュラリティ(人工知能が人間の能力を超える技術的特異点)」というテーマのコラムを書いた筆者も、非常に興味をそそられている。インターネット上のあらゆる情報を学習したうえで、汎用的な質問に対し、的確かつ自然な言語であっという間に答えを出してくれる、このChatGPTは、本当に驚きだ。
 言葉による回答だけでなく、画像やプログラムの生成までやってくれるChatGPTは、知的生産性を強力にアップするツールになる一方で、多くの知識労働者の職を奪う諸刃の剣だとも言われている。
 筆者もこの間、盛んに「AI活用を!」と唱えてきたが、今ひとつ現実感がなく、お題目に終わって来たが、ChatGPTの登場で一挙に身近で現実的な世界になってきた。とにかく触ってみて、どのようなものなのかを体で感じてみなければと思い、ChatGPTの会員登録をしてみた。そして試しに、タクシー業界についていくつかの質問をしてみた。
以下は、その質問とChatGPTの回答を、そのまま引用したものである。いずれの質問にも即、数秒で回答が始まる。概ねにおいて的確な回答と、その速さには、唯々、驚くばかりだ。

教えて下さい。日本のタクシー業界の特徴と課題は?

1.高いサービスレベル
 日本のタクシー業界は、顧客サービスの質が高く、車両の清潔さやドライバーの礼儀正しさ、安全性の高さなどが特徴的です。
2.規制の厳格化
 日本のタクシー業界は、厳格な規制があり、ドライバーや車両に対する免許制度や安全基準が設けられています。
3.競合が激しい
 日本のタクシー業界は、競合が激しく、地域によっては多くのタクシー会社が存在しています。また、配車アプリやライドシェアサービスなどの新しいサービスの登場により、市場環境が変化しています。
 一方、課題としては、以下のような点が挙げられます。
1.高齢化社会への対応
 日本のタクシー業界は、ドライバーの平均年齢が高く、高齢化社会に対応することが求められています。
2.労働環境の改善
 タクシー業界は長時間労働が課題とされており、ドライバーの労働環境の改善が求められています。
3.経営の安定化
 タクシー業界は経営が安定していない地域もあり、配車アプリやライドシェアサービスなどの新興サービスに対する対応や、業界再編などが求められています。
4.運転者の確保
 競合が激しく、運転者を確保することが難しい状況にあります。
 これらの課題を解決するためには、デジタル技術の活用や労働環境の改善、車両の省エネ化や多様なサービスの提供など、様々な取り組みが必要です。

タクシー業界の将来はどうなるか?

1.デジタル技術の進化
 デジタル技術の進化により、タクシーの配車や決済などのプロセスが自動化され、よりスピーディーかつ安全なサービスが提供されるようになると予想されます。
2.電気自動車の普及
 温暖化対策や環境保全の観点から、電気自動車の普及が進んでいます。今後、タクシー業界でも電気自動車の採用が進むことが予想されます。
3.ライドシェアサービスの普及
 ライドシェアサービスの普及により、タクシー業界に対する競合が激化することが予想されます。これに対応するために、タクシー業界は新しいサービスの提供や、価格競争力の向上など、様々な取り組みが求められることになります。
4.人工知能や自動運転技術の進化
 人工知能や自動運転技術の進化により、タクシーの自動運転化が進むことが予想されます。自動運転により、安全性が向上すると同時に、労働力不足を解消することができると期待されています。
 これらの変化に対応するために、タクシー業界はデジタル技術や環境技術の導入など、様々な取り組みが必要とされます。また、ドライバーの教育やトレーニング、労働環境の改善など、人材確保や人材育成にも力を入れる必要があるでしょう。全体的に、技術の進化や社会情勢の変化に対応し、創意工夫を重ねながら、タクシー業界の将来を切り拓く必要があると言えます。
 以上の設問の他にも
◯タクシー業界の生産性を上げるにはどうしたら良いですか
◯何故タクシー業界は人手不足に陥っているのか?
◯地方のタクシー業界は存続できるか?

などを聞いてみた。
 もちろん一般的な回答ではあるが頭の整理には非常に役立つものであった。

地域全体最適配車プラットフォームとChatGPT

 静岡TaaSでは、地域の全体最適配車プラットフォームを目指しているが、このChatGPTをスマホなどのアプリ配車システムへの応用のみならず、電話受けや乗務員への配車指示についても、音声認識や音声配車の手段として活用できたらと思う。IVRシステムのAI版にまで作り込めたら、利用者や乗務員にもやさしく、かつ効率の良い受注配車システムができ、タクシー事業の生産性の飛躍的な向上に寄与すると思われる。
 いずれにせよ、タクシー業界に限らず、この新しいChatGPT的世界を活用できる会社や組織、個人がこれからの世界を牽引していくと思われる。面白い世界がまた始まった。
(2023年4月23日記)


清野 吉光(きよの よしみつ) 略歴
1950年 長野県四賀村生まれ、印刷関係など様々な職業に従事。1976年 清水市の日の丸交通入社。1980年 静岡市内の事務機器センターに入社。1982年 システムオリジンを仲間と創業、専務取締役。1992年代表取締役社長就任。2016年3月 システムオリジン社長退任。クリアフィールド取締役。2021年3月 システムオリジン戦略企画担当取締役に就任。2021年5月 一般社団法人静岡TaaS代表理事に就任。

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