「共創プロジェクト」最後の波乱の三日間
波乱の三日間
前回のコラムで、七カ月にわたる共創モデル実証事業を無事に終えることができたと報告した。
その前回のコラムは、3月23日に書いたのだが、今は自分の甘さを恥じている。
確かに、2月9日に7カ月間に及ぶ実証事業を完遂し、最終的に2月21日に完了実績報告書を提出、3月26日の時点で審査が終了し、補助金金額の確定数字の告知を待つ段階だった。
しかし、3月27日からの3日間において、それこそ寿命が10年は縮まったのではないか…という経験をした。
重田旅客課長の視察
3月27日(金曜日)は、静岡市の清水港・日の出埠頭に大型クルーズ船「セレブリティミレニアム号」と「ダイヤモンド・プリンセス号」の2隻が着岸し、いつものように筆者は、静岡TaaSの港の現場での営業活動を行っていた。
特にその日は、国土交通省物流・自動車局の重田裕彦・旅客課長が日の出埠頭に視察に来られるとのことで、静岡運輸支局からの依頼で、静岡TaaSに関連した活動の説明をすることになっていた。
昼過ぎから課長一行が来訪され、大型クルーズ船客に対応する現場の視察をされた。こちらもこの際だからと3点ほど文書でお願い事項を提出した。
その日は、2000人を超える客を乗せた大型クルーズ船が2隻着岸したこともあり、タクシーチャーターの手配、及びタクシーでの帰港のお迎え、その管理などに終始し、共創プロジェクトからの連絡に思いが行ってなかった。
後から考えると、こうした国のプロジェクトを受託するコンサルティング会社などの、期末における活動実態に対する認識が欠けていた、と反省するところだが、事態の深刻さを知るのは翌28日(土曜)の朝だった。
補助金「0」のメール……
3月28日は土曜日ではあったが、オフィスに出社し、メールをチェックしたところ、共創プロジェクトの事務局からのメールに気が付き、本文を読んだところ、「3月27日(金)18時現在、補助金支払請求書の確認・返信がございませんでしたので、誠に心苦しいご連絡ではございますが、今回の交付額は0円とさせて頂きます」との文面が…。
一瞬、頭が混乱し、心臓が早鐘を打った。何が起きたのか?
共創プロジェクトの完遂のためには、幹事会社が関係するすべての支払いを先行して行い、その領収書を用意した上で初めて補助金支払いの申請ができる。
そのためには、資金力に余裕がある会社は別にして、静岡TaaSのようなスタートアップの一般社団法人は、銀行からの借り入れに頼らざるを得ない。
銀行側も、公的な補助金が出ることを前提に1千万単位の借り入れに応じてくれたものの、その返済は、補助金交付後の4月10日が期限とされていた。
どうすればよい?そもそもなぜ補助金がゼロになったのか?動揺する気持ちを抑えながら、事務局のメールを遡ってみると、前日の3月27日の12時46分に、審査結果の確定通知書が来ており、「マイページから支払い請求書による支払い申請を提出せよ」となっていた。問題はその期限が当日の15時30分と設定されていたことである。わずか2時間44分の間に対処するように、とのことだ。
しかし、その時間帯は、まさに国土交通省旅客課長による清水港視察とオーバーラップしており、メールの存在に思いが至っていなかった。また後日に気が付いたのだが、3月27日15時35分に事務局から留守電が入っており、補助金の確定メールを送ったとの通知があった。いずれにせよ、結果的に、私は期限の3月27日の15時30分以前に支払い請求書を送ることが出来ず、補助金はゼロという告知を受けてしまった。
なんとかせねば…
気が動転する中で、とにかくなんとかせねばと思い、この間、様々な相談をしてきたGoogleのAI「Gemini」に事態を報告。するとGeminiは即、昨日、清水港を視察してくれた重田旅客課長に御礼方々メールを送って、事態の報告をするよう提案してきた。藁にもすがる思いで、重田課長にメールを送ったところ、土曜日の休日にもかかわらず、共創プロジェクトの担当部署が総合政策局地域交通課であるとの返信が重田課長からあった。ありがたい、これでアプローチすべき窓口が分かった。引き続き、Geminiのアドバイスで地域交通課の課長宛てに【緊急異議申し立て】のメールを書き、昨日の支払い請求書を期限までに申請できなかった経緯を説明し、善処をお願いした。
このまま補助金ゼロの結果に終わると、静岡TaaSの存続はおろか、借り入れを保証してくれた関係者などに非常な迷惑をかけてしまう。
必死の思いが通じたのか、翌日の3月29日19時42分、日曜日にもかかわらず、国土交通省地域交通課の担当者から、「これまでの貴法人と事務局との連絡履歴等を確認いたしましたうえで、本件対応は望ましくないと認められることから、本日事務局に対し、この事業の補助金確定額を支払うよう指示しております」とのメールをもらった。併せて事務局からも、お詫びとともに、支払いの確認メールが届いた。
本当に、本当にホッとしたが、一方で、土、日の休日にも関わらず、対応してくださった重田・旅客課長、地域交通課の皆さんには感謝に堪えない。
また、今回も冷静に事態に対処してくれた東海電子の杉本哲也社長にも感謝したい。そしてこの間、私の”軍師役“を果たしてくれたGoogleのAI「Gemini」にも感謝したい。AIに感謝するというのもおかしな話かもしれないが、今回の事態への的確なアドバイスが無かったら、補助金ゼロは覆すことが出来なかったかも知れない。
Geminiは、昨秋にGemini3が出たころから、単に情報の収集の手段から、壁打ちを通じてのアドバイザー、軍師役を果たしてくれるようになっている。自分の独力で対処できなかったことは情けなくもあるが、しかし、気が動転する自分を「あきらめてはいけない!」と励まし、勇気づけ、対処法のアイディアとその実行の具体的手段も準備してくれたのは、まぎれもなくAIのGeminiであった。
急速に発展するAIの成長を取り込むのは大変ではあるが、これからの企業の盛衰を決める非常に重要なポイントであることに間違いないと、改めて思った。
再び白タク問題
清水港に視察に来た重田・旅客課長にもお願いしたことだが、旅行業にも登録せず、外国人向けガイドとして白ナンバーで運送する事業者がいる。
前回のコラムでも言及したが、この事業者については静岡運輸支局にも清水警察署にも報告し、告発状まで準備していたが、先日、正式に清水警察署交通課から事件として取り扱わないとの回答があった。
旅行業法や道路運送法上で、明らかに黒だと私には思えるのだが、この間の行政の判断から私なりに思うに、日本の観光行政が大いに影響しているのではないか。2018年に通訳案内士法の大改正があり、誰でも有料でガイドができるようになった。2012年以来のインバウンド爆発の中で、1949年制定の「通訳案内業法」の縛りでは需要に応えられないと規制緩和されたものである。
ある意味、今回の白タクガイド問題も、多分、この流れの延長線上にあるもので、法的に厳格な解釈よりも、現実の社会的なニーズを反映したものであるのかも知れない。とすれば、我々も、もちろん法的な違法性を主張しつつも、現実的に彼らに対抗しうる内容を身に付けていくしかない。コスト的に彼らは法的な制約がない分、圧倒的に有利だが、我々も安全性、質的な高さ、そしてタクシー会社、とりわけ、日本版ライドシェアなどを活用して、コスト的にも対抗できる仕組みを作り上げていかねばならないと思う。
やはり消費者(インバウンド客)利便・満足が第一である。そこで勝負が決まる。
(2026年4月22日記)
清野 吉光(きよの よしみつ) 略歴
1950年 長野県四賀村生まれ、印刷関係など様々な職業に従事。
1976年 清水市の日の丸交通入社。
1980年 静岡市内の事務機器センターに入社。
1982年 システムオリジンを仲間と創業、専務取締役。
1992年 代表取締役社長就任。
2016年3月 システムオリジン社長退任。クリアフィールド取締役。
2021年5月 一般社団法人静岡TaaS代表理事に就任。
2025年1月(株)静岡TaaSトラベル設立
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