タクシージャパン 掲載コラム

『コロナ禍の今は仕込みの時期』

「公共交通マーケティング研究会第7回例会」にYou Tubeで参加

昨年12月24日のクリスマスイブの日に公共交通マーケティング研究会(幹事代表=加藤博和・名古屋大学教授)の例会にオンラインで参加させていただいたが、最後のまとめの際に加藤先生が「コロナ禍で大変なこの時期こそ、仕込みの時期ではないか」と提言されていた。私自身、この言葉に非常に共感を持ち、コロナ禍で新しいことなど何もできない、それどころではない、という気持ちも分かる気はするものの、今は敢えてコロナ後に備えて、仕込み=準備の時期ではないか、と思う。
 前回の当コラムで『タクシー産業の未来は実は明るい』と大見得を切ったものの、新型コロナウイルス感染症の第3波の襲来と、大都市圏を中心とした緊急事態宣言の発令で、飲食店のみならず、タクシー産業も追い打ちとなる打撃を受けている。多くのタクシー事業者の苦境は続き、未来どころではなく、「現在の危機」に直面しているのが実情だ。そうした中で、私自身も前回のコラムで『タクシー産業のあるべき姿』の能書きを外野で語るだけではなく、タクシー事業者と同じ土俵の上で試行錯誤せねば、と思い、『隗より始めよ』という諺の通り、タクシー事業経営に自ら携わりたいと(躊躇しながらではあるが…)述べた。

静岡市内の駿河交通のM&Aにチャレンジ

そういう経緯の中で、たまたま縁があり、静岡市内の21台のタクシー会社の全株式を私の次男が社長を務める株式会社クリアフィールドが1月18日に取得し、タクシー会社の経営に関わることになった。タクシー会社の経営そのものが目的ではなく、タクシー事業の生産性を高めるためのビジネスモデル、とりわけその中核となる地域の最適プラットフォームを作るための『きっかけ』になれば、との思いからなのだが、いざ現実に関わってみると、コロナ禍におけるタクシー事業経営には非常に厳しいものがあり、『きっかけ』どころか『自らの存続さえ簡単ではない』と感じている。
 しかし、これがタクシー会社の、とりわけ地方の零細タクシー会社の置かれている現実であり、ここから今まで語って来た「能書き」をどう実現していくのか、が問われているのだと思っている。その意味で、このM&Aは、私自身にとっては、経営実態はどうあれ、前進であり、「タクシー業界の売り上げが半分に減った」とか、「実働率が50%割った」とかいういわば単なる「情報」が切実で具体性を持った「現実」となり、切迫度合が格段と増してくる。
 今回のタクシー会社のM&Aは家族を巻き込み、清野家の事業となっており、まさに「同族経営」そのものだ。かつて代表者を務めていたシステムオリジンでは同族経営を否定した事業運営をしてきたが、より経営リスクが高い今回のような取り組みは、逆に同族経営でないとチャレンジができなかったのではないか、と思っており、家族がこうした取り組みに賛同し、参加してくれたことは、本当に有難いと思う。

1社だけではどうにもならない構造的課題

だが、このコロナ禍が収束し、仮にコロナ禍前の水準近くまでタクシー需要が戻って倒産の危機を免れたとしても、タクシー産業の構造的危機そのものが無くなるわけではない。
 コロナ禍がその実態をよりはっきりさせたように、夜の飲酒客に頼ったようなタクシーのビジネスモデルは一層衰退するだろうし、乗務員不足による実働時間率の低下はより一層進むだろう。既にそうした時代の変化を読み取り、自社の経営の柱を福祉や企業保有車両の運行管理、観光(旅行業)などの複数かつ固定的な需要とし、これらを徹底した乗務員教育と先行投資によって開拓しているタクシー事業者も存在している。
 しかし、多くの地方の零細事業者にとってはそうしたことにチャレンジするための経営資源、人材、投資力が不足しており、今までのようにはやってはいけないと感じつつも、思案投首状態だと思われる。従って、地域全体のタクシー会社を連携、統合する「地域の最適プラットフォーム」の確立が必要となる。

地域の最適プラットフォームの役割

本質的には、タクシー事業の実車時間率と実働時間率を向上させ、タクシー事業の生産性を上げることだが、具体的に地域の最適プラットフォームの役割としては、前回のコラムでも提案した、

①電話&スマホアプリの共同受注と多機能配車タブレットの運用
②高度な需要予測と配車(交番)供給計画
③サブスクリプション(月極め定額運賃)の普及
④副業のサブジョブドライバー・プラットフォームによるスポット乗務員の構造的かつフレシキブルな供給
⑤タクシー事業者協力型自家用有償運送の需給マッチングへの活用

ーなどとなるが、一番の肝となる役割は「フルタイムまたはサブジョブドライバーを問わず、乗務員への一元的でレベルの高い教育とその管理」である。
 共同配車は、乗務員のレベルにバラツキがあるとマッチング効率が半減する。もちろん、顧客のニーズも様々だから、そのニーズに合うレベルの乗務員をプラットフォーム側がしっかりと把握し、効果的に配車することも必要だろう。
 このようなプラットフォームをどのように構築するのか、そのための人材、システム、資本の調達など課題は満載だが、地道に準備していくしかない。

「タクシー事業に関する政策提言」

また、そのようなプラットフォーム実現のためにも、是非とも行政には改革をお願いしたい点がある。たまたまチームネクストの代表世話人である三ヶ森タクシー(福岡県北九州市)の貞包健一社長から、チームネクストとしての行政への「タクシー事業に関する政策提言」として、今月27日に行われるチームネクストのオンラインセミナーで論議する予定のたたき台が事務局に送られてきたので、貞包社長の許可をいただいた上で、その趣旨と提言項目をここに掲載をする。

趣旨

○ コロナ禍において交通事業者は大変な打撃を受けている。
○ この状況下でタクシー事業を継続していくためには抜本的な生産性向上が必要で、その際に障害となる規制などについて検討し、政策提言を行う。
○ タクシー事業者も受け身の経営から脱皮すべき。
○ どうすれば地域の公共交通を維持できるのか、みんなで考えよう。

提言項目

① 譲渡譲受申請の簡素化・迅速化
② 運行管理業務の共同運営またはアウトソーシング化
③ 運行管理業務のI T 化(始業・終業点呼から常時監視へ)
④ 副業運転手(サブジョブドライバー)の活用
⑤ ジャンボタクシーの営業区域の拡大(または除外)
⑥ ダイナミックプライシングの導入
⑦ 救援事業の対象緩和及び明確化


 提言項目の詳細は、チームネクストのホームページを参照して下さい。
(2021年1月21日記)


清野 吉光(きよの よしみつ) 略歴
1950年 長野県四賀村生まれ、印刷関係など様々な職業に従事。1976年 清水市の日の丸交通入社。1980年 静岡市内の事務機器センターに入社。1982年 システムオリジンを仲間と創業、専務取締役。1992年代表取締役社長就任。2016年3月 システムオリジン社長退任。クリアフィールド取締役。2021年3月 システムオリジン戦略企画担当取締役に就任。2021年5月 一般社団法人静岡TaaS代表理事に就任。

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。