タクシージャパン 掲載コラム

クルーズ船チャータータクシー手配と地域共同アプリの意味!

クルーズ船清水港寄港の復活とチャータータクシー

コロナ禍が収束し、昨年3月から待望の清水港への大型クルーズ船の寄港が復活した。
 昨年10月掲載のこのコラム欄「クルーズ船客への手配旅行の挑戦」で書いたように、静岡県タクシー協会清水支部からの要請もあって、清水港の日の出埠頭に静岡TaaSのチャータータクシー受付ブースを設置して、外国人観光客への観光コースと貸切運賃の案内、注文確定とクレジットによる事前決済までを行い、そして担当する乗務員には日本語による運行指示書を渡し、仮に英語が不得意でも運行に支障がない仕組みを作る試みをして来た。
 昨年10月20日にブースを設置して以来、この4月15日までに12回、延べ145台のチャーターを受注した。金額的には250万円ほどになる。
 静岡TaaSがブースを出す前は、するが企画観光局が現場での通訳ボランティアを募集し、大変な苦労をして観光客と乗務員の間を仲介し、手配を行っていた。その結果、時には行き違いがあったり、あるいはクレジット決済でトラブルになったり、メーター運賃で観光地に行ったのはよいが、現地での帰りのタクシーが確保できず、観光客が苦労する事態が発生していた。そうした点でも、旅行会社としての静岡TaaSのチャーター手配が少しはお役に立てたのではないかと思う。

クルーズ船観光客のタクシー利用は水物!

我々のチャーター手配の経験は、まだ12回と少ないが、その中でいくつかの課題も見えてきている。
 まず、タクシー利用はその需要予測が難しく、クルーズ船によって、チャーター利用が極端に多く、また時間が集中するケースと、逆に殆ど利用が無いケースとが有ることである。
 経験から言えることは、まず乗客の人数である。カジュアル船と言われる3000人から5000人が乗船している船は、比較的料金も安く、その場でのチャーター利用が多い。逆に、乗船客1000人以下の高価なラグジュアリー船は、事前に大手旅行会社のパック旅行を契約している人が多いのか、現地での即時のチャーター利用は少ない。もちろん、天候も大いに影響しており、荒天時などあらかじめチャーターした大型バスなどは運行を決行するが、チャータータクシーの利用は少ない。
 一方で、タクシーの供給の方も、曜日、時間帯によって供給力が変動する。結果、お客様が列をなしているのに、タクシーが一向に来ず、お客様の不興を買ったり、逆にタクシーが列をなしているのに、お客様がいなかったりという事態も発生する。そうしたミスマッチを少しでも解消するために、静岡TaaSではYouTubeを使った現地のライブ映像中継を試みている。スマホで静岡TaaSのYouTubeチャンネル登録をしてもらえれば、リアルタイムでタクシーの待機状況が分かるので、配車センター係員や乗務員にとって便利な仕組みとなっている。
 いずれにせよ、この間の経験から、チャータータクシー利用は、現地での受注体制と供給体制が整備されていけば必ず増えていくと確信している。事実、3月30日と4月15日の大型船では35台のチャータータクシーの注文があり、しかも山梨県の新倉山や忍野八海、富士宮の田貫湖、白糸の滝、世界遺産センターなど、5時間、6時間のチャーターが発生している。昼の暇な時間帯の仕事としては非常に効率が良く、せっかく清水港という富士山が見える稀有な港を持つエリアのタクシー会社としては、これを活かさない点はない。静岡市清水区のタクシー会社はもとより、葵区、駿河区のタクシー会社にも是非、取り組んで欲しいと思う。

見えてきた課題①配車の順番

現在、静岡TaaSがチャーター手配をやるようになったので、タクシー担当の通訳ボランティアの方たちは、ワンウェイのメーター運賃の観光客を担当することが多くなった。しかし、チャーターとワンウェイ(メーター清算)の順番が整理されておらず、結果的にチャーターが優先されてしまうことが発生し、ワンウェイのお客様と通訳ボランティアの方に迷惑をかけることが多かった。そこで、まずは最初にチャーターとワンウェイのお客様を通訳ボランティアの方に切り分けてもらい、共通連番の順番待ちカードを発行することによって、公平で分かり易い体制を作ってもらうことにした。
 昨年10月に始めた静岡TaaSのチャーター受付が一定の成果を上げつつも、新たな課題を生み、そしてそれを清水港客船誘致委員会、するが企画観光局、通訳ボランティアの方たちと協議、連携をしながら一歩一歩と良い仕組みを作って行きたいと思う。

見えてきた課題②待ち時間の提示

 チャーター需要が集中し、タクシーが足りなくなった時に、クルーズ船の出港時間の制約もあるので、お客様からどのくらい待てばよいかとよく聞かれる。それによって、お客様は目的とする観光地に行けるかどうかを判断するのだが、現時点では残念ながら「わかりません」と答えるしかない。
 しかし、先月号のコラムでも言及したように、地域共同アプリを採用し、車載端末の位置と動態情報を公開してもらえれば、かなりの確率で要望に応えることができる。また、相互の共同配車と日の出埠頭の現地での需給状況をリアルタイムで伝達をすることも出来るようになる。
 さらに発展した話だが、日の出埠頭の現地に特殊車両による移動サテライト配車センターを随時設置し(これは日の出埠頭での強風対策にもなる)、そこから配車指示をすることも可能になる。まさに静岡のタクシー業界の高次のDX化が可能となる。年100回に及ぶクルーズ船の寄港をタクシー需要喚起の大きな柱とするには、そこまで考える必要があると思う。

見えてきた課題③自家用車活用事業の先鞭

それにしても、根本的な課題は、タクシー乗務員不足によるタクシー供給力の絶対的な不足である。特にチャータータクシーは長時間の拘束が発生するので、逆に一般のタクシー需要が応えられないという問題も発生する。
そこで、国土交通省が推奨する自家用車活用事業の活用である。チャータータクシーはまさに自家用車活用事業の条件である事前確定運賃であり、経路も事前に確定しており、時間も限定された時間のみの稼働である。また英語の堪能な一種免許保持者に最適な仕事であり、是非やってみたいという声も聞かれる。地方自治体の静岡市がこのクルーズ船客へのタクシー供給が不足していると静岡運輸支局に申告すれば、自家用車活用事業を自動的に承認すると国土交通省の通達には書かれているので、静岡市には是非、まずは自家用車活用事業をこの分野から取り組んで欲しいと思う。
(2024年4月25日記)


清野 吉光(きよの よしみつ) 略歴
1950年 長野県四賀村生まれ、印刷関係など様々な職業に従事。1976年 清水市の日の丸交通入社。1980年 静岡市内の事務機器センターに入社。1982年 システムオリジンを仲間と創業、専務取締役。1992年代表取締役社長就任。2016年3月 システムオリジン社長退任。クリアフィールド取締役。2021年3月 システムオリジン戦略企画担当取締役に就任。2021年5月 一般社団法人静岡TaaS代表理事に就任。

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