タクシージャパン 掲載コラム

テイクオフ静岡挑戦の顛末

地域創成プロジェクトテイクオフ静岡

先々月のこのコラム(第129回)で表明した、静岡経済同友会主催の地域創成プロジェクト「テイクオフ静岡」への応募の結果が11月13日に出た。
10月17日に応募書類の提出を行い、10月26日には書類選考が通ったとの連絡があった。その後、11月7日にウェブ会議システムZOOMを使った7分間のプレゼンテーションと選考委員との20分間の質疑応答があった。
7分間という短い時間でどれだけ静岡TaaSの設立趣旨と事業内容を説明できるかは心配ではあったが、何とかその意図をアピールできたのではないかと思う。また、選考委員からも活発な質問や意見をいただき、私なりに手応えを感じることができた。
この「テイクオフ静岡」はなかなか魅力的な試みで、そのホームページでは『静岡県中部をフィールドとして地域活性化を目指す多種多様な企業・団体を大募集!突き抜けた静岡を創生する事業アイデアを幅広く募り、その実現に向けて静岡経済同友会を中心とするビジネスメンターが、3カ月にわたって一緒にブラッシュアップします。』と書かれており、この呼びかけに応募した団体が、書類選考で13団体に絞られ、集中的なZOOMによるプレゼンテーションを通じてアクセラレート(短期にビジネスを成長させる支援)対象の5社が絞られることになる。この応募状況の活況ぶりをみると、静岡県中部地域もなかなか捨てたものではない!ということだと思う。

しかし、残念な結果!

11月7日は日曜日にもかかわらず一日がかりで選考委員会のメンバーによる熱心な選考会が行われたが、その結果は11月13日の金曜日にもたらされた。
ビジネスメンターによって静岡TaaSのビジネスモデルがブラッシュアップされることを大いに期待していたが、結果は残念なことにアクセラレート対象の5社には選ばれなかった。しかし、非常に客観的で的確な評価と課題を指摘されているので、通知された審査委員会の総評を許可を得て転載させていただく。次の通りだ。

しずおかTaaS様のご提案につきまして、以下の通り、審査委員会からの総評が集約されました。

・ 静岡市におけるラストワンマイルの移動に焦点をあて、地域創生並びに地域活性化を図っていくという取り組みについては非常に感銘を受けるとともに、問題点を的確に捉えた取り組みであると考えます。

・ 特に更なる高齢化が進展する静岡エリアにおいては、移動サービスを充実することは地元経済の活性化に直接繋がるものと共感をいたします。

・ また静岡市におけるタクシー業界の問題点を的確に指摘し、その課題を解決するための施策についても的を射たものと考えます。

・ しかしその一方、課題解決に向けた施策は、まさにタクシー業界そのものが取り組む内容であり、「テイクオフ静岡」として間に入ってのアクセラレートは、業界への問題提起となり、様々な諸問題が広がることが想定され、大変難しいと感じました。

・ しずおかTaaS様におかれましては、是非、業界を巻き込んでこの構想に取り組んでいただき、ラストワンマイルの移動の需要喚起と供給を結び付け、静岡市民の移動における利便性の向上を図り、業界の持続的な発展を目指していただきたいと存じます。

最終選考で提案された全ての団体様の企画を総合的に審査した結果、しずおかTaaS様のご提案の採択は上記の総評を受けて見送らせて頂くことになりました。

「テイクオフ静岡」にご応募頂きましたことに厚く御礼申し上げますとともに、今後近いうちに静岡経済同友会と別の形での連携がなり、ご縁が紡がれますことを心より祈念致します。

静岡創生アクセラレータ「テイクオフ静岡」に関しまして、今後ともご支援ご理解頂けます様よろしくお願い致します。

貴社並びにご応募頂きましたご担当者の皆様の益々のご活躍をお祈り申し上げます。

テイクオフ静岡運営事務局

総評からの教訓

総評では、静岡市のラストワンマイル移動の課題に対する静岡TaaSの設立目的、存在意義を評価し、とりわけ高齢化に対処する移動サービスの充実、またタクシー業界の課題についての問題意識を適切に評価してくれている。しかし、こうした課題に対し、「タクシー業界そのものが取り組む内容」であり、「テイクオフ静岡」がアクセラレート((短期にビジネスを成長させる支援)するのは難しいとの判断でした。
多分、この判断は正解で、やはり、こうしたチャレンジはまず業界みずからが取り組み、自力更生の精神で押し進めなければならず、始めから他の力のサポートを期待するのでは成功は覚束ないことを教えてくれているのだと思う。
総評の最後で、再録になるが「是非、業界を巻き込んでこの構想に取り組んでいただき、ラストワンマイルの移動の需要喚起と供給を結び付け、静岡市民の移動における利便性の向上を図り、業界の持続的な発展を目指していただきたいと存じます。」
という励ましの言葉を糧に頑張って行きたいと思う。

観光危機管理・事業継続力強化研究会に参加

公益財団法人するが企画観光局が主催する観光危機管理・事業継続力強化研究会のワークショップに静岡TaaSとして参加してみた。
10月27日、11月25日の二日間に渡り、延べ13時間半の本格的な危機における事業継続プラン策定のためのワークショップであった。観光、交通事業者における、いわゆるBCPプラン(事業継続計画)の作成が遅れており、日本商工会議所が力を入れて、全国的にこの分野のBCPプランの普及を勧めようとしており、そのテストケースとして静岡が選ばれたらしい。
静岡TaaSは、未だ具体的なビジネスとして立ち上がってはいないが、交通事業としてのタクシー業のBCPプランの作成のお手伝いも含めて、良い機会なので参加してみたが、自らは交通事業者でもなく、利用者とタクシー事業とを繋ぐプラットフォーマーという役割なので、雛形として用意された交通事業者用のモデルBCP案の活用に苦労したが、アドバイザーとして一対一でサポートしてくれた、するが観光企画局の鈴木主幹のお陰で静岡TaaSの役割が整理できた。
とりわけ、静岡TaaSが、地域において災害などの危機発生時に最後に残る移動手段であるタクシーを地域全体で有効活用できるプラットフォームならではの役割があることに気付かされた。静岡TaaSは通常のタクシー無線、IP無線、さらには携帯網を使ったタブレットによる配車がハイブリッド(複合的に)で活用できる体制を作る(図参照)ことにしている。従って、災害時に携帯通信や有線電話などが通信制限されても、タクシー無線が比較的安定的に機能し、東日本大震災時でもタクシー無線が大活躍をしたと聞いており、そうした多様な通信手段を一か所で統合的に扱える体制は危機管理という点において地域で大きな役割を果たせるのではないか、と気付いたところだ。地域災害などの危機の時にも役に立つ静岡TaaSを目指したい!
(2021年11月29日記)


清野 吉光(きよの よしみつ) 略歴
1950年 長野県四賀村生まれ、印刷関係など様々な職業に従事。1976年 清水市の日の丸交通入社。1980年 静岡市内の事務機器センターに入社。1982年 システムオリジンを仲間と創業、専務取締役。1992年代表取締役社長就任。2016年3月 システムオリジン社長退任。クリアフィールド取締役。2021年3月 システムオリジン戦略企画担当取締役に就任。2021年5月 一般社団法人静岡TaaS代表理事に就任。

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