タクシージャパン 掲載コラム

チームネクスト世話人会の活性化

もっと地方の中小タクシー会社の声を発信しよう!

2012年に始まったチームネクストのセミナーは、9月25日にウェブ会議システム「ZOOM」で開催した2020年度の総会を兼ねたオンラインセミナーで29回目を迎えた。
 ここ2年ほどのセミナーは、コロナ禍のためにチームネクストのひとつの特徴である研修先の現地に直接訪問し、泊りがけで参加者の議論と懇親を図る、いわゆる「セミナー合宿方式」が取れないでいる。しかし、野田昌太郎事務局長の努力により、その時々の時宣に即したテーマの講師を招請し、オンラインであっても充実したセミナーを開催できていると自負している。
 今回のオンラインセミナーも、「withコロナ、afterコロナにどう対応するか?」というテーマで、日亜化学工業のUVプロジェクト企画・営業グループ山内繁晴氏、フタバタクシー(仙台)の及川孝社長、国際的な自動車・環境ジャーナリストの川端由美氏の3人の講師を招いて、テーマに沿った話を聞くことができた。
 そして、今後のチームネクストの活動の方向性としては、従来の全国、全世界のベストプラクティスの情報の収集や見学、交流だけでなく、チームネクストのメンバーである地方の中小タクシー会社の実情を基に、タクシー業界や行政への積極的な改革の提言をしていこうということになった。
 チームネクストは有志による全くの任意団体であり、業界の声を代表できる組織ではないが、それでも多少異端ではあっても自由闊達な意見を発信できる組織であると思っている。大都市の大規模なタクシー事業者の抱える課題と地方の中小事業者の抱える課題とは随分と違うものがあり、その優先度合や逼迫度にも差異がある。
 そうした意味合いにおいて、チームネクストとしても当初目指した方向性でもある、単なる学習する組織から実践する組織となって改めてチャレンジしていくための発信力を高めようということになった。

チームネクストの世話人会

チームネクストは、2012年の発足時における世話人会の構成として、代表世話人に天野清美つばめ自動車社長(名古屋市)、世話人に兼元秀和キャビック社長(京都市)、岩村龍一コミタクモビリティサービス会長(岐阜県多治見市)、加藤高立千代田タクシー社長(静岡市)に就任していただいた。その後、天野社長が名古屋タクシー協会の会長に就かれ、さらに2代目代表世話人の兼元社長も京都府タクシー協会の会長に就かれたので、3代目となるチームネクストの代表世話人として、タクシー業界への「大胆な提案」を提起した貞包健一・三ヶ森タクシー社長(福岡県北九州市)をお迎えした。
 今回の総会では、この世話人会の活動を活発化させ、メンバーの拡充も図ることになった。現在、全国子育てタクシー協会の前会長であるフタバタクシーの及川孝社長(仙台市)、岩手県でユニークなデマンドタクシーを推し進めているヒノヤタクシーの大野尚彦社長(盛岡市)に新しく世話人メンバーへの就任を打診し、受諾する旨の返事をいただいた。次回のチームネクストのセミナーにおいて、メンバーからの承認をいただく予定としている。また、初代と2代目の代表世話人である天野つばめ自動車社長と兼元キャビック社長のお二人には、協会長としての重責があって多忙ということもあるので、世話人から顧問に就任していただくことになった。

まずは世話人会の活性化!

実践する組織にチャレンジするための第一弾として、12月16日に静岡市内にある静岡TaaSのオフィスで世話人による4時間に及ぶフリーディスカッションを行った。
 タクシー事業の、とりわけ地方のタクシー業界の時間当たりの生産性の低さを如何に克服するか、をテーマに、具体的な目標を時間当たり営収3000円に設定し、この金額を如何に実現するかを巡って議論した結果、多様な分野での課題が整理された。
 コロナ禍前であればこの目標額は、都市部では決して不可能な数字ではない。しかし、この時間当たり3000円の営収というのは、地方都市の多くではコロナ禍の中ではもちろん、コロナ禍前でも実現できないタクシー事業者が多い、というのが現実だ。こうした生産性の低さが乗務員の離職をもたらし、タクシー乗務員が年金併用で無ければ務まらない職場となり、一層の乗務員不足と高齢化をもたらすことになる。コロナ禍はこうした地方のタクシー事業の構造的な生産性の低さをより顕在化させ、タクシー事業の存続を脅かしている。
 既に静岡市内では休業や倒産がこの数カ月で2社発生しており、また大都市の事業者への会社売却も進んでいる。こうした地方のタクシー業界の疲弊は、その地方の利用者のおでかけの足の確保を損ない、必要な時に移動できず、市民生活の質の低下をもたらすことになる。その結果、高齢者の介護予備軍を増やすことにもなり、地方財政を圧迫するという悪循環をもたらすことになる。

タクシー事業の生産性をあげるためには?

理屈の上では、生産性を上げるためには実車時間率と実働時間率を引き上げる必要があり、現在の需要に加えて新たな需要(特にサブスクリプション・サービスによる潜在需要の顕在化)を開拓し、そして、その需要に対してタイムリーに車両供給をする仕組みを作るということになる。
その為には、一社一社の努力では限界があり、地域全体の車両の効率的で最適な配車の仕組みを作る必要がある。また、その供給力のネックになっている乗務員不足を解決するためのサブジョブ(副業、複職)ドライバーの供給プラットフォームも必要となる。いずれにしても地域全体のタクシー事業の生産性を上げるためには、共同化(協業化)がキーワードとなる。
 無線配車の地域での共同化による効率化は、地域の利用者の利便性向上のみならず、配車コストの負担に苦しむ事業者にとっても有益である。しかし、その一方で事業者にとって大きなネックとなるのは各社の運行管理者のコストである。

運行管理の共同化

地方の中小規模タクシー事業者では、無線の配車係と運行管理者を一人で兼務しているケースが多い。無線配車の共同化が実現しても、常駐する運行管理スタッフが各社に必要なので、結果としてコストダウンにはならず、無線の共同化にも躊躇することになる。せめて共同配車センターに出勤した各タクシー会社の運行管理者が、自社の乗務員の点呼を配車センターからIT遠隔点呼で行うことが可能になればこの問題はクリアとなり、大幅に共同化が進む可能性が高い。地方のタクシー事情に即した形での、運輸規則等の柔軟な運用が強く望まれる。

チームネクスト世話人会の行政への提言

①サブスク運賃制度の推進
②DXによる共同化を推進、共同配車、共同点呼(運行管理)
③サブジョブドライバー制度の推進
④身障者割引、免許返納割引の行政負担
(2021年12月20日記)


清野 吉光(きよの よしみつ) 略歴
1950年 長野県四賀村生まれ、印刷関係など様々な職業に従事。1976年 清水市の日の丸交通入社。1980年 静岡市内の事務機器センターに入社。1982年 システムオリジンを仲間と創業、専務取締役。1992年代表取締役社長就任。2016年3月 システムオリジン社長退任。クリアフィールド取締役。2021年3月 システムオリジン戦略企画担当取締役に就任。2021年5月 一般社団法人静岡TaaS代表理事に就任。

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。