タクシージャパン 掲載コラム

令和6年度『共創モデル運行事業プロジェクト』に向けて!

「タク放題」実証実験報告会

7月27日、静岡市駿河区のJR東静岡駅に近い県立複合文化施設「グランシップ」において、第7回となる静岡TaaSのタクシー事業者向け説明会を開催した。
 一昨年の5月に設立した一般社団法人静岡TaaSは、静岡市域における移動の足を確保するとともに、何よりもタクシー事業の存続と発展を目指すことをその設立の趣旨とした。そして、「地域全体最適配車」を実現するための共同配車プラットフォームの構築を目指し、地域全体の需要と供給の最適マッチング、さらには需要そのもの、供給そのものの拡大をも目指して行こうという構想から出発した。
 設立から2年が経過し、こうした構想は試行錯誤の中で遅々たる進展ではあるものの、少しずつだが形を作りつつある。
 静岡TaaS事業の大きな柱である共同配車事業は、いまだ配車業務の受託という形ではあるが、2社による相互配車という形で実績をあげつつある。また、需要開拓という点では昨年の7月から1年間に渡り、「タク放題」という月額定額でのタクシー乗り放題サービスを旅行業のスキームを使ってチャレンジしてきた。
 今回の説明会は、このチャレンジの結果報告として「『タク放題』実証実験の報告と今後」というテーマで行った。報告会には、静岡市内のタクシー事業者、静岡運輸支局、静岡市の交通政策課、「タク放題」利用者などが参加し、またタクシー日本新聞社や東京交通新聞社などのタクシー業界紙誌に加え、静岡第一テレビなどの一般マスコミも含めた報道関係者にも取材を頂いた。特に静岡第一テレビは、当日午後の情報番組「every・静岡」の中で昨年7月1日の「タク放題」出発式の映像も使いながら、この1年間の成果と課題という形で3分を超える放映をしてもらった。今後の静岡TaaSの活動にも引き続き注目してもらえるものと期待している。

「タク放題」の成果!

「タク放題」は当初、昨年7月から12月までの6カ月間の実証実験として始めた。
26人の利用会員からスタートし、最大会員数は12月時点での55人。累計での会員加入者数は94人であった。静岡市内北西部に設定した「タク放題」サービスエリアの人口は約4万5000人、うち65歳以上が約1万5000人という地域実態に対して、「タク放題」会員の獲得目標数としては400人と控えめなものとしてスタートしたが、結果としてはその1割程度に終わった。
 当初の半年という実証実験期間の予定を1年に延長したのは、今年1月から静岡MaaSによる「のりあい実証実験」の運営業務を静岡TaaSで受託したこともあるが、半年では「タク放題」サービスの認知が拡がらず、最低1年はやってみないと分からない、と判断したからである。しかし、「タク放題」会員数については後半6カ月においても残念ながら微減という結果に終わった。一方で、利用回数については、7月の月間500回から10月には800回を超えるようになり、本年3月には1000回を超えた。利用者の平均利用回数は月16回であり、最大では月の利用回数が70回を超えた会員もいた。「タク放題」は、月曜から金曜までの週5日の運行なので、毎日3回以上乗っていることになる。
 また、利用実績データの解析によると、平均迎車時間は平均6分39秒、平均乗車時間は6分38秒で、利用者からすると、コスト面に加え、待ち時間の短さや固定の乗務員など、クオリティ面でもかなり良いサービスとして提供できたのではないかと思われる。
 利用者アンケートでも、外出が増え、従来の移動手段であった路線バスや自家用車、自転車からタクシーへの乗り換えとなり、高齢者の運転免許証返納後の受皿にもなり得ることが確認できた。利用者、また利用者から直接話を聞く乗務員からも、このサービスの継続を望む声が出ており、「タク放題」利用者にとってタクシーによる移動が、如何に利便性が高いものか、一定の認識を得られたのではないかと思う。

タク放題の課題

しかし一方で、この「タク放題」サービスを継続するためには致命的な課題がある。
それはこのサービスの運営主体である静岡TaaSの採算が取れないことである。
利用者から収受する会費に比してタクシー事業者に支払うタクシーの借上料が高く、逆ザヤになっており、民間のビジネスとしてこの仕組みでの継続はとても難しい。こうした移動サービスに係る定額のサブスクサービスの採算性確保はどこでも大変と聞くが、改めてこの1年間の経験でその思いを強くした。しかし、決して不可能だとは思っていない。それを可能にする方法を見出すのがこの1年間の実証実験の目的でもあった。

「令和6年度共創モデル運行事業プロジェクト」へ!

これまで1年間の「タク放題」、そして半年間の静岡MaaSによる「のりあい放題」の業務受託を通じて得た教訓を基に、来年度の国土交通省の地域交通共創モデル実証プロジェクトに応募し、これから1年をその準備活動に専念することにした。今回の静岡TaaSの説明会でもその骨子を提案させてもらった。以下、概略を表にて紹介するが、詳しくは静岡TaaSのホームページに掲載した説明会でのプレゼン資料『タク放題実証実験の報告と今後』を参照して頂きたい。

地域交通共創モデル

 今回目指す共創モデルは、「タク放題」(乗用)とのりあい放題(乗合)を共に引継ぎ、なおかつ会員利用者の増大と配車コストの削減、時間帯や天候による需給の変動にフレシキブルの対応できる仕組みを目指すものである。
この仕組みがうまく機能すれば令和7(2025)年度以降の実装が可能であり、機能しなければ、再挑戦が必要となる。いずれにせよ、静岡TaaS単独ではチャレンジ自体が不可能なので、来年度の地域交通共創モデル実証プロジェクトでの採択がカギであり、そのための準備をどれだけ出来るか、である。
(2023年7月28日記)


清野 吉光(きよの よしみつ) 略歴
1950年 長野県四賀村生まれ、印刷関係など様々な職業に従事。1976年 清水市の日の丸交通入社。1980年 静岡市内の事務機器センターに入社。1982年 システムオリジンを仲間と創業、専務取締役。1992年代表取締役社長就任。2016年3月 システムオリジン社長退任。クリアフィールド取締役。2021年3月 システムオリジン戦略企画担当取締役に就任。2021年5月 一般社団法人静岡TaaS代表理事に就任。

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