
国土交通省共創モデル実証運行事業に採択さる!
「クルーズ船寄港時の空白解消とインバウンドタクシー観光のアップデート」
私が代表理事を務める一般社団法人静岡TaaSが、国土交通省の令和7年度共創モデル実証運行事業プロジェクトに「クルーズ船寄港時の空白解消とインバウンドタクシー観光のアップデート」というテーマで応募したところ、念願が叶い、5月12日付で採択された。
この事業は、静岡市の清水港への大型クルーズ船寄港時における一時的なタクシー不足による交通空白を解消し、さらにインバウンド客への観光タクシー提供の質的なレベルアップを図ろうとするものだ。
当然、交通空白を補うものとしてのイベント対応型日本版ライドシェアの活用が構成要素の一つではあるが、今回の実証事業の眼目は、日本版ライドシェアを含むタクシー車両に計100台のタブレット端末を設置し、その車両の位置や動態を一元的に把握して、インバウンドを中心としたクルーズ船客への配車に役立てようというものである。
清水港クルーズ船ドライバー最適配車プラットフォームの構築
クルーズ船の入港時には清水港におけるタクシー利用が集中するため、とりわけ長時間の貸切チャーターが発生すると、現場でタクシーが不足して利用希望者の出発時間の目途が付かないことがある。
クルーズ船は、基本的に朝方に港に着岸し、夕方に出航するパターンが多く、出港時にチャーター車両が帰着しないと大変な事態になる。従って、何時に出発できるかは、利用客にとって最大の関心事になる。しかし、現状では一旦タクシーが不足すると、タクシー車両がいつ港に現れるかは一切わからない。こうした時の利用客の不満とストレス、そして配車担当者のストレスもかなりのものである。とりわけ、今年7月から、現在はタクシーの待機場として使われている清水港の最寄りにある広い駐車場の敷地が、静岡市海洋地球総合ミュージアムの新築工事に入るため、タクシーの待機場所として使用することが出来なくなり、より一層タクシーの待機状況が分からなくなる。
そうした課題の解決に、今回の実証運行事業によって設置される100台のタブレット端末は、大いに力を発揮するはずである。タブレット端末の搭載車両がタクシー会社を問わず、どこにいるか、お客様を乗せられる状態にあるかどうか、がデジタル技術によって即時に把握でき、利用客にもディスプレイなどで知らせることが出来る。さらに、清水港への配車依頼をメッセージで伝えることも出来る。そうすれば、利用客にどのくらい待てばよいか、或いは、そもそもチャーター運行を実施できるかどうか、の判断材料を提供できる。
安全管理面での効果
現在、多くのタクシー無線は電波の到達距離が十数キロで、タクシーが静岡市外に出てしまうと無線の電波が届かず、車両の状況が把握できなくなってしまう。一方で、携帯電話のパケット通信網を使ったこのタブレット端末は、全国で通信が可能となるので、清水港から県境を越えた神奈川県の箱根や山梨県などにタクシーが向かってもその車両位置や状況が分かり、メッセージ送信も可能である。遠隔地でのタクシーの事故や故障などのトラブル時の対応は非常に苦労するものだし、また、クルーズ船の出港に間に合うかどうかも、タクシーの位置が分かれば、判断しやすく、対処もしやすい。
インバウンド観光タクシーのレベルアップ
今回の実証実験では、清水港における最適配車のプラットフォームだけではなく、インバウンド対応のタクシーのレベルアップを目指している。
昨年の暮れから、静岡県タクシー協会と連携してタクシー乗務員向けの「英語乗務員」「アプリ乗務員」の説明会を行い、単に言葉の問題だけではなく、観光客へのアテンドや、写真の撮影、さらに英文の観光案内マニュアルの提供などを登録された乗務員に向けて行い、おもてなしレベルの向上をお願いしている。
一方で、タクシーの不足・不在等による一時的な交通空白を補うものとしてのクルーズ船向けイベント型日本版ライドシェアの運行が4月から実施されているが、この間の新聞社、テレビ局の報道もあり、日本版ライドシェアのドライバー希望者が増えている。ありがたいことに、その多くが海外での仕事経験者や留学経験者で、英語や他の言語に堪能な方が応募して来ている。
その意味で、インバウンド観光の質のレベルアップには大いに貢献してくれるのではないかと思う。また、殆どの方が本業を持ち、副業としてのスポット乗務の希望であり、クルーズ船寄港時における、イベント対応型日本版ライドシェアの勤務スタイルとの親和性が高い。どちらかというと社会貢献という趣旨でクルーズ船向けの日本版ライドシェアを捉えている方が多いので、おもてなしという点でのさらなるレベルアップに繋がるのではないか、とも思う。
インバウンド需要のデータの収集と解析
清水港へのクルーズ船寄港のみならず、このところ日本に来るインバウンド客は非常に増えており、今年は初めて4000万人を超えるのでは、と予想されている。日本では数少ない成長産業と位置付けられているが、問題はそうした増える訪日客を、如何に自分たちのビジネスに結び付けるかだ。
静岡市の観光政策課でも、クルーズ船客がどのようなニーズを持っているかを調査するアンケートやスタンプラリーなどを行っているが、クルーズ船客のタクシーチャーター利用を拡大するために、チャーター利用状況のデータを収集し、クルーズ船の種類、客層、天候(特に、富士山が見える、見えない)、滞在時間などによる需要の変化を解析し、今後の受入態勢の整備に繋げて行きたい。
需要の予測や解析は非常に大事なポイントであり、交通空白への対処のためのコアな情報である。また、需要そのものを実際のチャーター、売上に繋げて行くためのマーケティングの基本情報でもある。
共創のかたち
この国土交通省の共創モデル事業は、一社での単独事業では応募できず、運送事業者を核として、観光関係やIT等の関連事業者など他の事業者との共創が必要であり、また、何よりも静岡市の「地域公共交通計画」との整合性が問われ、従って静岡市の審査、推薦が必須となる。また、静岡運輸支局への事前相談も必要となる。
そうしたことも踏まえた上で、今回、共創のプラットフォームとして「清水港クルーズ客船タクシー観光推進プラットフォーム」を創設し、その実施主体として私が代表理事を務める一般社団法人静岡TaaS、共創パートナーであり、運行主体である静岡県タクシー協会清水支部、駿河交通、また、公益社団法人するが企画観光局、株式会社システムオリジン、株式会社静岡TaaSトラベル、株式会社Otnoの各社に共創メンバーとしてこのプラットフォームに加わってもらった。
株式会社Otonoには、松原で有名な三保での実績をいかし、GPS位置情報と連動した観光地の音声案内を作成してもらう。このプラットフォームのメンバーとの共創の下で、数年後には清水港へのクルーズ船寄港数が日本で一番を実現するよう、頑張って行きたい。
(2025年5月25日)
清野 吉光(きよの よしみつ) 略歴
1950年 長野県四賀村生まれ、印刷関係など様々な職業に従事。1976年 清水市の日の丸交通入社。1980年 静岡市内の事務機器センターに入社。1982年 システムオリジンを仲間と創業、専務取締役。1992年代表取締役社長就任。2016年3月 システムオリジン社長退任。クリアフィールド取締役。2021年3月 システムオリジン戦略企画担当取締役に就任。2021年5月 一般社団法人静岡TaaS代表理事に就任。
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